「山口一郎の遭遇」2026/03/05昼公演_感想

 サカナクションの山口一郎さんによる単独公演「山口一郎の遭遇」に行ってきた。冒頭については、YouTubeで配信されていたことも踏まえ、かんたんに感想を残しておく。

 私が、一郎さんの音楽に触れた最も古い記憶は、2013年の紅白歌合戦である。appleのラップトップを使いながら『ミュージック』を演奏する姿が、印象に残った。その後、ラジオで『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』を耳にしたのがきっかけで、母がサカナクションにハマった。それからは、旅行の折など、サカナクションがカー・ステレオの定番になった。ライブツアーや、うつ病による一郎さんの休業など、バンドの動向は、母を介して伝え聞いていたものの、熱心に聴き込むほどではなかった。

 転機になったのは、『怪獣』のリリースである。アニメ『チ。-地球の運動について-』の主題歌として制作された曲であるが、久々の新曲のリリースであり、大人気漫画のアニメ化に伴うタイアップということで、大いに注目していた。これが出色の出来栄えで、うつ病の療養をしながら、これだけの作品を作ることができる一郎さん、を含めたサカナクションの秀でた能力に衝撃を受けた。

 以降、改めてアルバムを聴きなおしてみた。悲壮な美しさと明るさが同居する音楽が、一人暮らしを始めた孤独にちょうど良かった。こうして私自身もファンクラブに入り、『Klee』に影響されてパウル・クレーの展覧会に行ったりなどした。そんな私にとって、今回の「遭遇」は、生で一郎さんを見る初めての機会である。

 さて、今回はYouTube「山口一郎チャンネル」のイベントであって、サカナクションのライブ・ツアーではない。したがって、歌唱は、配信での『新宝島』のような、おふざけが多いものだと予想していた。

 が、しかし。一曲目は、『白波トップウォーター』のリアレンジ・バージョンで、情感たっぷりの圧倒的な歌声に、泣きそうになってしまった。その後も、高品質な音響と映像を組み合わせた、サカナクションのライブさながらの演目で、びっくりした。一郎さんは、YouTube配信を始めたことで、これまでとは異なったファン層に「遭遇」できたと語っていた。今回の公演の内容は、そうした人達に向けた「改めての自己紹介」という側面もあったのではないか。「うつになって良かったと思えた」との言葉もあった。私自身、持続的な抑うつ傾向にあり、ここ一年は、薬や睡眠導入剤を使っての生活が続いている。窓際社員で居続けるだけでも大変である私からすると、これだけの公演を成功させる負担は、想像もできない。プロミュージシャンの矜持をみた一日だった。

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